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メルヘンに導いてくれた母との愛と葛藤

by ミケ

#Memories  #Column

 母娘の間にある葛藤は、多くの家庭にあるようで、私の周囲でも、わりと聞く話ではある。

 私自身も、直情型で激するのが早い母K子さんに対して、強い葛藤を持っていた。すぐに感情的になって、平手が飛ぶので、とにかくビビっていた。ええオバハンになった今でもたまに「あれは、ほんまに嫌やったなぁ」と、少女時代に味わった理不尽を、ふと思い出すこともある。

 ただ、K子さんの方は、私が反抗をしていたとは、あまり考えていないようで、以前『やりやすかった』なんて言っていた。

 まあ、実家時代のことを言えば、弟の方が、一つ間違えたら、刺し違えるかもしれないくらいのラディカルな反抗期を送ったせいもあって、気弱な小娘の反抗なんて、まるで目立たなかったのだろう。

 いくら母に対して強い反発を感じていても、「この母で良かった」と思うことを今更ながら発見したりして、特に、子供の「ファンタジー」の世界を、よく演出してくれたし、守ってくれたことに関しては、K子さんじゃなかったらあり得なかったように思っている。

 母は朗読が好きで、幼い頃は、就寝前にはいつでも、弟と私に、臨場感あふれる朗読を披露してくれていた。

 また、実家担当のサンタクロースは、玄関先にプレゼントを置いて、すぐに空に戻っていく…という離れ業を持っていた。

 イブの日、弟と私は、呼び鈴が鳴ると、一目サンタを見んと、大急ぎで玄関に走って引き戸を開け、夜空を仰ぎ見た。

 もちろん、空には何もないのだけれど、ちょっとした雲の動きや星の瞬きがトナカイのソリかもしれないと思われて興奮したものだった。

 大人になって理解したことは、その陰には、「だれかさん」の迫真のピンポンダッシュがあったのだね。

 (現在、わが家の二代目サンタは、その慣例を引き継ぎ、呼び鈴を鳴らしてやってきて、玄関先にプレゼントを置くのであるよ…笑)

 節分の豆まきもしかりで、父に鬼をやらせて盛り上がっていたし、夏の家族旅行では、K子さんは、自らイラストを描き、『るるぶ』顔負けの旅程表を作って、家族に配ってくれていた。

パソコンどころか、ワープロもなかった時代、母一人が、手描きでやってくれていたことを思うと、本当に頭が下がる。その上、仕事も持っていたのだから、実母ながら、ポテンシャルの高い人だったと、今になるとわかる。 

 

 姉御肌で迫力のあるK子さんのことは、娘の立場からは、ほんまにほんまに怖かったけど、こうやって振り返ると、女性として魅力的な人だったのだと思う。

 何より、今リスペクトしていることは、前述のような、家族に対する独自の尽くし方(笑)について、「私は、やりたくてやっただけ。自分が楽しいからやってた」と言い、自身の工夫や手柄を、なんとも思っていないところだ。

 これが、わずかでも「あんた達のために、自分を犠牲にした」なんて思っていたとしたら、あまり気分のいい思い出にはなってなかっただろう。

 …うむ。誉め殺しと言っていいくらい、本日は母のことを褒めちぎったね。笑

 自分の中のファンタジーを死守するきっかけになっているであろう母の存在は、今となっては、それだけでありがたい。

 母は、決して意識的ではなかったけれど、私が自分の「頑固さ」を作り上げるためには、K子さんの激しさが、どうしても必要であったように感じる。

 母が怖かったからこそ、私は自分のファンタジーの世界に「逃げ込めた」。そこで無二のメルヘン観が、「勝手に育っていった」のだから。

 K子さんは、歳時記を通じてファンタジーを直接教え、厳しく接することで、私をメルヘンへ導いた人と言えるのだ。

 メルヘン屋として生きていくことを決めている今、このことは、むしろ、恩寵だと感じずにはいられないのである。

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